2004年10月

IFRS規範

1. はじめに

欧州審議会決定により、IFRS(International Financial Reporting Standards)規範が義務付けられました。

この規範は連結財務諸表の作成のみに適用されます。

IFRS規範適用は,ヨーロッパにおいての企業会計の表示の調和とUS GAAPとの同調を目標としています。2005年1月1日以降開始の事業年度からの適用義務は、ヨーロッパの上場企業に対して、又、2007年1月1日以降の適用は、非上場企業であっても資金一般公募(例えば債券を発行)をしている企業が対象です。

2005年第1四半期中間決算書からこの規範を適用するためには、比較するために再計算した2004年の損益計算書と2004年1月1日から始まる年度の貸借対照表が必要です。

このように、IFRS規範に変更するためには、その前年度の損益計算書をIFRS形式に再処理しなければなりません。

フランスの他の企業については、この規範の適用は任意で可能です。これらの企業の規範使用と適用は、もうしばらく後に予定されています。


フランスの個人の会計に対するIFRSの適用は可能ではあるが、税法との関係でその適用は現時点では不確実です。

現在まだ議論中であるIAS32(金融商品の表示)とIAS39(金融商品の区分と記帳)を除くIFRS IAS全文が適用可能とされています。
最近になり、IAS39は、特に銀行に関連する預金口座の範囲と記帳を除いて、適用可能となりました。


2. IFRS規範導入による主な会計上の変更事項

a 一般的な相違点

1) 外観より実質の優位主義、例えば金融取引契約や特別な企業結合の処理。
2) 費用収益対応の原則により、資産・負債の定義に規定されない要素(創立費、繰延費用、試験研究費)を計上することはできない。
3) 引当金、将来のキャッシュフローの現在価値化
4) 将来における経済上利益の概念に基づく資産の定義がより厳格である。
5) ある種の潜在的な含み益を計上することができる。(金融資産や不動産)
6) 附属明細書に記載する情報、特にセクター別の情報(事業別、地域別)がより詳しくなる。

b 会計の表示 

1) 貸借対照表

・ 資産と負債について、流動と固定とに(あるいはその流動性に応じて)区別する。
・ 総合損益(Comprehensive Income)の導入。損益計算に計上された要素と資産・負債の要素の評価差額とをあわせたものが総合損益である。
・ 税効果会計に基づく繰延税金資産及び負債の計上義務。
・ リース契約と金融取引契約との結合で、それぞれの契約について借入金と固定資産の計上をすることになる。
・ 退職給付コストの計上義務。
・ 営業権の償却と年度毎の減損テスト(Impairment Test)評価は禁止されている。


2) 損益計算書

・ 特別損益の概念の廃止と異常損益項目(天災などの自然災害や収用などの結果)の定義の厳格化。
・ 営業損益(金融費用、税金、パートナー企業の分配金等の控除前)、経常損益、臨時的要素、少数株主持分、当期純損益の定義の厳格化。

3. 結論

今日、フランス上場企業グループは、IFRS規範への変更を着々と進めていますが、これから数年後には、非上場企業グループもこの新しい規範へと移行して行くはずです。
ヨーロッパとアメリカ間の企業会計の表示の原則の一致を目標としているので、他国企業もUS GAAPかIFRS規範のどちらかに適応して行かなければなりません。

実際、2004年10月12日からIASB(International Accounting Standards Board)と企業会計基準委員会ASBJ(Accounting Standards Board of Japan)は、第一歩として、日本の企業会計基準とIFRS規範との相違点を少なくさせるために議論を始めています。最終的には、もちろん、国際的に会計基準を統一させるのが目的です。