NRE法と簡素株式会社(SAS)-- Top
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ここでは外国企業グループのフランス現地法人にとって実際に関連のある事項について簡略に説明いたします。
− 新経済規定(Nouvelles Réglementations Economiques)についての2001年5月15日法について、
− 今までの株式会社(SA)よりある面で有利な簡素株式会社(SAS)。
この法は非常に内容豊富で複雑ですので、企業が実際に適用する前に、専門家に相談をしてください。
I 新経済規定法(NRE法)-- Top --
この法律は広範な領域について述べているので、その主なものについて述べます。
1. 株式会社の改革
a)株式会社経営陣
今後は次のそれぞれのポストが分離されます。
− 社長 (取締役会の議長)、
− 専務(ディレクター・ジェネラル)、
− 場合によっては、一人か複数の代理のディレクター・ジェネラル。
社長とディレクター・ジェネラルの職務が分離されました。たとえ一人で兼務している場合でもそうです。この点は次回の臨時株主総会で原則として規定すべき事柄です。
ディレクター・ジェネラルは会社の実際的な管理をし、社長は単に会社が法律上問題なく、適切に運営ができるように監視する取締役会の会長となります。
ディレクター・ジェネラルが望めば、5人を限度に副ディレクター・ジェネラル(directeurs généraux délégués)を任命することができます。
この社長及び役員会とディレクター・ジェネラルプラス副ディレクター・ジェネラルとの職務の分離は、 監視委員会(Conseil de surveillance)と重役会(Directoire)の分離と同様に比較できます。
フランスの株式会社の社長、ディレクター・ジェネラル、取締役会のメンバーの最長任期は規定されています。が、この点は外国企業の現地法人にとっては問題とならないでしょう。
b)管理職の報酬の記載
毎年行われる決算承認のための株主総会に提出する、取締役会(或いは重役会)の経営レポートに、その会計年度に会社から支払われた現物供与と報酬すべてを、各管理職について明記しなければなりません。
ここでいう管理職とは
- 社長と役員(或いは監視委員会のメンバー)
- ディレクター・ジェネラルと副ディレクター・ジェネラル(或いは重役会のメンバー)
です。
この規定は、2001年1月1日以降に開始される会計年度についての年次レポートから適用されます。
この経営レポートは、株主全員と企業委員会(Comité d’entreprise)に通知されますし、商業裁判所の書記課にも提出されます。この公告という点が大きな変更事項です。
c)協約について
規制取引についての協約
今後は、5%以上の投票権を有する株主と結ぶ協約については役員会の事前の認可が必要となります。以前は2企業に共通の役員がいる場合にだけ、その許可が必要でした。
通常の活動についての協約
これらは事前の認可は必要ありません。しかし今後、社長はそれらの協約事項をリストにして、役員会、監査人に告知しなければなりません。株主もこのリストを見ることができます。
d)その他
- フランスで連結決算書が作成されている場合は、以前と異なり、その連結決算書を株主総会で承認しなければなりません。
- 役員会をビデオ・コンフェレンスで行うことも可能です。しかし、社長、ディレクター・ジェネラルの任命・解雇、決算についての役員会の場合は、実際に役員の出席が必要となります。
- 企業委員会(Comitée d’Entreprise) が望めば、その2人の委員が総会に出席を認められます。
2. その他の形態の会社の改革
- 有限会社では、現金での出資分は少なくともその5分の1を払い込まなければなりません。
- まだ設立以来2年に満たない場合でも、株式会社を簡素株式会社に変更することが可能です。
3. ストックオプション
- 譲渡不能期間が4年に短縮されました(以前は5年)。
- 100万フランを超えた利益については、税率が40%から50%に引き上げられました。
- 2年の分割期間の場合は、軽減税率の26%が100万フランを超えない利益について適用されます(それ以上は40%)。
- 2001年4月27日からこの条項は適用されます。
4. 経済規制の改革
a)支払の期日
特別に注意書きがない場合を除き、30日以内に支払うことを義務付けています。 30日以内、又は特記されている期日までに支払わなかった場合は、自動的に遅延利息がつきます。請求書にこの利息のレートを記載しなければなりません。
b)商業関係の断絶
既存の商業関係を断絶する場合、予告期間を設ける義務があります。この予告期間はそれまでの両者の商業関係のあった期間や、その職種の慣例で決定されます。
c)濫用
例えば、不当な商業行為を強制したりして販売会社が仕入先に対して圧力をかけたりという、濫用をNREは固く禁止しています。
d)商業行為の調査委員会
NREは商業行為の調査委員会を設立しました。この委員会はすべての企業の審理、諮問機関となるのですが、目的は生産、仕入れ、販売の間の商業行為上起こってくるすべての質問に答えることです。
5. 2001年2月19日法
NRE法ではありませんが、株式会社、簡素株式会社、株式合資会社に直接関係してくるので、ここに加えたいと思います。
会社資本の増資をする場合、臨時株主総会において、従業員分の資本の増資を決定するかどうかを提起しなければなりません。
実際には、株主はそれに反対の投票をするので、従業員にも株を持たせると言うことにはなりません。
しかしながら、従業員に新株を持たせるかどうかという提起をすることが義務となり、それをしない場合は、その臨時株主総会は無効となり、よって増資の決定も無効となります
II. 簡素株式会社 SAS-- Top
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このNRE法によって、株式会社には新たな方向付けがされました。その改革によって、外国グループのフランス現地法人は、株式会社以外の形態、特に簡素株式会社(SAS)に眼を向けられることでしょう。
SASは、複数の経営者(例えば2つの企業グループ)でなる場合と、1人の経営者の場合があり、後者は特にSASU(一人簡素株式会社)といいます。
一つの企業グループによってコントロールされている現地法人には最も適していると思いますので、特にこの会社形態SASUについて述べましょう。
1. 税務・会計上の規則
いずれも株式会社と同じです。課税関係も同じで、法人税の税率も同じです。監査人1名が義務付けられています。
2. SAからSASへの変更
純資産が会社資本金より上回っているかぎり、いつでも変更可能です。SAに税務上の欠損金がある場合は、SASへ欠損金の持ち越しができます。
3. 法律上の規則
SAと違い、より柔軟かつ簡単です。
a) 最低株主数SAでは7名でしたが、SASUでは1人です。管理者が代わった場合の株の移行がなくなり、外国親会社に100%配当できます。
b) 経営陣については、社長を選任することだけが必要です。この社長には単独の株主、つまり親会社、あるいは都合のよいように、親会社が任命する個人(大概はSAでの社長)がなります。この社長だけを商業裁判所に登録します。役員会はなくなります。しかし定款にディレクター・ジェネラル複数でなる管理委員会を定めることができます(これは会社内、対外的にも有意義です。)
SAでは刑法民法上の責任が取締役にありましたが、SASでは社長だけです。
c) 管理職報酬の公告の義務はありません。給与を受けている取締役の第三者に対する制限の観念もなくなります。
d) 協約(規定された、一般的な)についての観念も、単独の株主ですからなくなります。ですから、協約に関する監査人レポートも当然なくなります。
e) 総会がなくなり、社長と監査人のレポートに基づく会計についての単独株主による決定にかわります。
f) 増資をする場合、従業員に新株引受権を与えるかどうかを提起する義務は残ります。これは形式的なもので、単独株主の決定によって、非常に簡単に拒否することができます。
【結論】-- Top
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この形態の会社は親会社のコントロールが簡単かつ完全にできます。法律・税務上は分離していながら、実際には、フランス現地法人は親会社のフランスにおけるローカルの一部門のようだと言えるでしょう。