研究開発税額控除
研究開発税額控除は、本格的な税制優遇措置とみなされており、これによりフランス企業は、当該企業に実際に適用される制度に応じて法人税または所得税を、大幅に減額することが可能になっています。
控除の利用は、毎年、発生税額から控除する形で行われます。3年間以内に利用できなかった場合は、残額をフランスの税務当局から還付してもらうことができます。
租税法典第244条では、研究開発控除の適用分野と計算方法に関する規則を定めています。
ヨーロッパでも屈指の成果を上げ、企業成長を助ける制度として利用者に親しまれている税制措置の概要を、以下にご紹介します。
1.1 対象企業
研究開発税額控除制度の対象となりうる企業は、次のとおりです。
- 工業に従事する企業
- 商業に従事する企業
- 農業に従事する企業
自由業 (医師、弁護士等)は除外されます。
1.2 研究開発費とは
これについては明確な規則がありますが、同時にいわゆる研究開発活動について幅広い解釈を可能にしています。
一般的に、法律では、研究開発活動を3つに分類しています。
- 基礎研究
- 応用研究
- 実験開発
1.2.-1 基礎研究
この最初のケースでは、条文をくり返すことはやめますが、研究開発活動を、実験の分析、その後の観察と解釈、として定義しています。
1.2 - 2 応用研究
この2番目の定義は、企業に数多くの可能性を与えるものであり、非常に重要です。
応用研究とは、新しい解決方法を見つけるために行われる活動の全体が対象になります。これらの解決方法は、当該企業があらかじめ設定した目標をそれにより達成できるものでなければなりません。
1.2 - 3 実験開発
下記を目的とする意志決定材料を得るのに必要なあらゆる情報を集めるため、試作品やパイロット施設等を用い行われる活動のことです。
- 新しい素材、装置、製品、製法、システム、サービスの生産
- 上記に定める生産の大幅改善
1.2 - 4 例示
業務内容 |
基礎研究
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応用研究
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実験開発
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分野外
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・騒音研究 |
○
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・ICカードの用途の研究 |
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○
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・生産ラインの規格認証取得 |
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○
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・ウィルス対策の研究(抗体の合成) |
○
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・新ソフトウェア開発のための特許取得 |
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○
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・騒音と空中突入を研究するための自動車製作 |
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○
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・新素材によるシャツ製作 |
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○
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・ある製品の新しい外観の研究 |
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○
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・遭難標識製作のための研究 |
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○
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2.1 原則
研究開発控除の原則は単純で、次のようにまとめることができます。
{N年度の支出 - [(N-1年度支出スライド額 + N-2年度支出スライド額)/2]} x 50%
この計算は、「費用増」控除額計算(つまり控除を生じるのは年度から年度への支出増)と呼ばれています。
注意
・支出が減っても、それまでに得た控除は国に返還されません。
・当該企業は4,000万フランを限度として税額控除を受けることができます。
2.2 支出の内容
研究開発控除額の計算に算入できる支出は、明確に規定されています。これらの支出には次の7種類があります。
- 研究開発活動用固定資産の減価償却費
- 人件費(秘書、マーケティング・アシスタント等、いわゆる支援スタッフを除く)
- 機能支出(人件費支出の75%)
- 特許の取得・維持費
- 規格関連費用
- 研究機関への委託研究費用
- 繊維企業のコレクション向け制作費用
補助金を得ている場合は、上記の支出から差し引くことになります。
2.3 適用期間
研究開発税額控除措置の実施期間は1999年〜2003年まで延長されました。
この期間中、次の企業はこの優遇措置を利用することができます。
- 1998年度にこの措置をすでに利用していた企業
- この措置をはじめて利用したい企業
研究開発控除措置を利用したい企業は、工業研究省から事前承認を得ることができます。承認回答が得られれば、後日問題が生じる恐れもなく控除を利用できます。同省からの回答が6ヶ月以内になければ、当該研究プロジェクトに暗黙の承認が与えられたことになります。
研究開発控除制度には、厳密な規則がありますが、革新的なポリシーをもつ企業にとっては素晴らしい財政上の援助措置となっています。
これにより得られる経済効果は、往々にして多額に上ります。
当記事は次の公認会計士事務所の協力により作成されました。
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