【日系企業グループのフランス子会社による利益配当】

J. フランス企業による配当に関する一般規則

K.仏国居住者に対する配当税制

L.EU加盟国の居住者に対する配当税制

M.
日本国の居住者対する配当税制


企業が利益を計上した場合、当該利益を積立金として社内留保するか、全額または一部を株主に配当するか、企業はいずれかを選択する事ができます。

フランス国外居住者である個人または法人の株主への利益配当に関する税制は、ここ数年来、大きな変化を見ています。欧州連合内での同税制の簡略化及び新日仏租税条約の制定がその主な要因と言えましょう。

今回の実務情報では、特に以下の4点に就いての現行法をまとめてみたいと思います:


J.フランス企業による配当に関する一般規則

1)配当可能額の定義

配当可能額とは、当該年度に発生した税引後利益から法定準備金への繰入額(同準備金が最低額に達していなかった場合)を差し引き、前年度までに貯えられた任意積立金と繰越利益とを加えた額を意味します。

法定準備金繰入額は当該年度税引後利益の5%に相当し、資本金の10%が上限額とされています。
更に、創業費および研究開発費は 、配当前に全額償却済みであるか、あるいは引当金計上されている必要が有ります。

2)利益配当の決定

利益を配当するか否かの決定は、通常、決算を承認する定時株主総会に於いて、株式会社の場合は取締役会、有限会社の場合は経営者会の提案の採決という形で行われます。

但し、臨時に招集された定時株主総会に於いて積立金の配当を決定する事も、例外的ではあれ、年度中の如何なる時点でも可能です。

また、中間配当は、監査人による証明済みの当該年度の中間決算に於いて利益が計上されている事を条件に認められています。

3)配当の支払い

定時株主総会に於いて採決された配当の支払は、事業年度終了後9ヶ月以内に行われる事が義務付けられています。

4)配当税の免除される配当

一般的に、利益配当が被る二重課税を取消す為のテクニックとして、タックス・クレジット(AVOIR FISCAL)が在りますが、特定の配当を対象に、株主のタックス・クレジット享受の権利を保護する目的で、配当税(PRECOMPTE)と呼ばれる特別税が 設けられています。

配当税は、当該利益が前事業年度およびそれ以前の5事業年度に於いて、普通税率で既に課税されている場合(最も頻繁に見られるケース)は非課税となります。

これに対し、実際にはめったに見られませんが、5年度以前の利益を配当した場合、あるいは軽減税率で課税された長期キャピタルゲインを配当に回した場合には、配当税の課税対象となります。前者の場合の配当税の税率は配当額の50%、後者の場合は (50−課税済み軽減税率)%となります。

K.仏国居住者に対する配当税制

1)通常の場合

フランスが税務上の居住地である個人または法人に対する利益の配当は、日本の資本が入っている法人の場合も含めてタックス・クレジット授与の対象となります。

タックス・クレジットの額は配当額の50%に相当し、配当受取株主に対して課税される所得税(個人の場合)あるいは法人税(法人の場合)からの控除が認められていま
す。

【例】
受領配当額
10.000

タックス・クレジット
5.000


---------

課税所得額
15.000




課税総額(15.000 × 40%)
6.000

タックス・クレジットによる控除額
− 5.000


---------

課税純額
1.000

2)特定の親会社の場合

フランスが税務上の居住地である親会社が配当子会社に対して10%以上の出資をしている場合、同親会社の受領配当は全額非課税となり、更に配当税免除で受領額を親会 社自身の株主に配当する事ができます(税務上の完全なトランスパレンス)。


L.EU加盟国の居住者に対する配当税制

国際租税条約によると、配当はその発生国に於いて源泉課税されると規定されています。仏国外に送られた配当に対しては、原則として配当額の25%に当たる源泉税がフランスに於いて徴収されます。
・ しかしながら、国際租税条約はこの最高税率に対して、しばしば上限を設けています。

EU指令は、一定の条件の下に、加盟国内の親会社が他の加盟国内の子会社から受取った配当を免税とする事を規定しています。

1990年に発布された同指令は、今後、ほぼ全てのEU域内国間の配当に対して適用される事になりました。

1)EU指令

以下の条件を満たした場合、加盟国間に於ける配当に対する源泉税が免除されます:

2)フランスに於けるEU指令の適用

源泉税が免除になる為には以下の諸条件が要求されます:

(a)子会社に課される条件

(b)親会社に課される条件

これ等の条件が満たされない場合には、次に例を挙げる様に、フランスと他のEU加
盟国が締結している二国間租税条約が適用されます:

株主の居住国
対法人株主税率
対個人株主税率
英国
15%
15%
ベルギー
15%
15%
イタリア
15%
15%
オランダ
15%
15%


3)EU指令よりも有利な二国間租税条約による規定


M.日本国の居住者対する配当税制

1995年3月3日に調印された新日仏租税条約は、フランス側では1996年3月24日付で発効されました。
同条約は、日本の親会社への配当に対するフランスでの課税を大幅に軽減しています。

以下の三つの異なったケースが存在します:

1)日本の親会社が、仏子会社の資本を最低15%保有し、最低保有期間が配当が行われた年度の後半6ヶ月間に亙っている場合には、配当額の5%相当の源泉税が課されます。

2)次の場合には、15%の源泉税が課されます:

3)親会社が上記(1)の条件を満たし、且つ適格居住者(RESIDENT QUQLIFIE)と見なされる場合には、源泉税が非課税となります。以下の企業が適格居住者と見なされます:

− 日本の政府、地方公共団体またはこれ等が所有する機関
− 日本の個人居住者
− 上場企業