2001年7月

【 事業税 】

I. 課税対象
II. 課税地
III. 課税基準
IV. 税率
V. 申告・納税期限
VI. 税額の下限
VII. 減免措置
VIII. 更正
IX. 具体例



直接税であるこの事業税の収入は、市町村や県・地方自治体の大きな財源となっています。

課税ベースとしては、企業によって使用されている事業用資産(固定資産)、及び現在のところ、従業員に支払われた給与累計額とされています。それ故、増資し、雇用を創出する企業を不利にするとして、この税は導入時よりいろいろと議論されてきました。ただし、給与部分に関しては、99年より段階的に軽減されてきており、2年後には削除されることになります。

又、この税は事業所・事業用地がある地方自治体において、毎年課税されます。

具体例も加え、この事業税の主だった特色を見てゆきたいと思います。


I. 課税対象

事業税は、給与所得者にならない事業活動を恒常的に行っている全ての法人・個人を対象に課税されます。

しかしながら、新設企業・事業所については、初年度の事業税は免除されます。
また、法人税の減免措置の対象となっている企業についても、同様です。

国土整備地区・復興地区に進出している企業も、同税の免除が受けられますが,ほとんどの場合、税務当局の事前の許可が必要です。

II. 課税地

事業税は一般的に、事業用地・事業所がある市・町・村において課税されます。ですから、複数の異なる地方自治体に事業所を持っている企業は、毎年、複数の事業税を納税することになります。


III. 課税基準

1. 対象期間

2001年(暦年)に徴収される事業税は、2000年5月1日までに各事業所について企業により自主申告(申告用紙Taxe professionnelle N°1003)されたデータに基づき税務当局により算定されます。企業は、暦年前年度に終了した事業年度(ここでは1999年度)のデータを申告するわけですから、算定基準になるデータと実際の納税年度との間には、2年のずれが生じることになります。

2. 課税ベース

固定資産税の対象となる資産 (土地・建物)
企業が使用している土地・建物の地理的な条件・床面積に基づいた賃貸価値に従って、税務当局が算定します。
この基準を私たちがコントロールするのは非常に困難ですが、前年度と比較して、大きな違いがないか確認することが望まれます。

固定資産税の対象とならない資産
上記の固定資産税の対象となる資産(土地・建物・付帯工事・建物付随設備等)を除いた貸借対照表の借方に計上されている有形固定資産です。これについては、企業がN°1003を使って申告します。
それらの総額の16%が課税ベースとなります。
リースしている資産は、企業が所有している資産のなかに、その取得価額を計上します。取得オプション行使時、つまりその資産が企業の所有となった時点でも、オプション行使時の価格ではなく、それまでと同様に取得価額を計上します。
又賃借している資産もその事業年度の賃借料が課税対象になります。しかし、賃借料がその資産の課税ベース(取得価額x16%)の80%以下、或いは120%以上の場合は、課税ベース±20%に代替されます。

給与
前暦年度の支払給与額年次申告書(DADS1)で既に申告したグロス給与総額
を届け出ます。
総額の18%が課税ベースとなります。
しかしながら、現在徐々に削減されているこの給与額ベースは、2003年の事業税からは、完全に削除されます。
移行期間として、以下の額が課税ベースより控除されます。

1999年の事業税
100 000F
2000年の事業税
300 000F
2001年の事業税
1 000 000F
2002年の事業税
6 000 000F

事業税は、企業単位ではなく、企業が持つ事業所単位で課税されますから、この控除額も個々の事業所単位に適用されます。


IV. 税率

その事業所がある市・県によって事業税の税率はかなり大きな差があります。平均的にはおよそ20%です。
企業がある市に事業所を新設する場合、その市における事業税の税率の軽重を調べるのも大事なことと言えましょう。


V. 申告・納税期限

1.納税期限
毎年6月15日までに、管轄の地方自治体の課税課に予定納税をします。
前年度納付額の50%が、予定納税額となります。
12月15日以前に、税務当局が算定した確定納税額から、前述の予定納税額を差し引いた額を納税します。


2.申告期限
毎年5月1日以前にN°1003書式を用いて、事業税の課税ベースとなる固定資産の額と支払給与額を申告します。企業に複数の事業所がある場合は、その後、 9月30日までにN°1003R書式で、各事業所毎に申告したベースの総括を本社管轄の地方自治体の課税課に申告しなければなりません。


VI. 税額の下限

次の2つの場合があります。

1.最小限の納税額
これは、例えば休眠中で、従業員が一人もいない、本社が単に“郵便箱”の役目でしかない企業に適用されるものです。地方自治体により税率が異なり, 固定資産税の対象となる資産の評価も一括して当局で行われるので、予測するのが難しいのですが、納税額は300Fから3000Fの幅になると言えましょう。

2.付加価値税に基づいた税額の下限
1996年の事業税から、前年度の税抜き売上高が5千万フラン以上の企業を対象に税額の下限が適用されるようになりました。2001年においては、前年度に企業が生みだした付加価値の1.5%が事業税の下限額となります。

VII. 減免措置

1. 活動停止に伴う減免
企業の持つある事業所の活動を停止した場合、当局への申請を条件に、活動停止以降の月に対しては免除の対象となります。

2. 活動減少に伴う軽減
2000年の事業税を例にしますと、2001年の課税ベース(固定資産と給与)が2000年の同課税ベース(1998年に終了した事業年度に基づく)を下回っている場合に、活動減少に伴う軽減措置が適用されます。
軽減額は次のように計算されます。

2000年事業税 x(2000年課税ベース − 2001年課税ベース)
/ 2000年課税ベース

軽減措置を受けるには、企業は管轄の地方自治体の課税課に自主申請をします(書式なし)。2000年事業税に対する軽減は、2001年12月31日までしか行われません。一方、2001年の確定した課税ベースが記されている納税通知書は、2001年12月頃に届きます。従って、この措置の対象となる企業は速やかに申請をする必要があります。

3. 付加価値による事業税の上限額
売上高に応じて、次のように事業税の上限額が定められています。
・ 課税年度の売上高が1億4千万・ フラン未満の企業は、その年に生みだした付加価値の3.5%
・ 売上高が1億4千万・ フラン以上、5億フラン未満の企業は、その付加価値の3.8%
・ 売上高が5億フラン以上の企業は、その付加価値の4%
付加価値とは、その企業の生産高が、外部からの仕入れ、サービスの消費を上回った額です。
賃借している資産の賃借料は、付加価値から控除する外部費用には参入しません。

事業税の額がこの上限額を上回った企業は、その旨所轄の地方自治体の課税課へ申請します。当局の承諾後、納税超過額は還付されることになります。

VIII. 更正

税務署については、事業税の支払通告から3年後の12月31日までが更正期間です。しかしながら企業が異議申し立てをできる期間は短く、支払通告の翌年の12月31日までとなっています。


IX. 具体例

決算日を3月31日とします。
2001年5月31日までに書式N°1003を用いて、2000年3月31日終了事業年度の課税ベースを申告します。(この課税ベースは2002年に納付する事業税の算定基準です。)

企業が申告するベース

貸借対照表の借方に計上されている有形固定資産  
  

土地 
3,000,000F
非課税
建物
15,000,000F
非課税
建物から取り外せない付帯工事・設備
8,000,000F
非課税
その他の付帯工事・設備
5,000,000F
課税
機械装置
8,000,000F
課税
車輌
320,000F
課税
事務用器具・備品
4,000,000F
課税
課税される有形固定資産
17,320,000F

リースによる資産(機械)購入価格
3,200,000F

課税される有形固定資産合計
20,520,000F




2000年に支払われた給与総額
35,000,000F




課税当局の算定

固定資産税の対象となる資産(税務当局の算定による)

520,000F
固定資産税の対象とならない資産 20,520,000F x16%

3,283,200F
給与35,000,000F x 18%
6,300,000F

2002年度規定控除額
-6,000,000F

給与部分の課税ベース

300,000F
グロス課税ベース

4,103,200F
基礎控除 (16%)

- 656,512F
ネット課税ベース
3,446,688F
地方自治体の適用税率
x 21.30%
2002年度事業税納税額

734,144F

この企業の2001年事業税納付額が700,000Fであるとすると、2002年には次のようになります。

734,144F − 350,000F = 384,144F


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このように事業税はとても複雑で、課税ベースを申告する企業の担当者だけでなく、課税当局にとっても誤りをしやすいものです。ですから、企業が申告するときは勿論、課税当局から送付される納税通知についても格別の注意が必要になります。
又、納税する前に、現行のいくつかの軽減措置の適用が可能ではないかを自問することも大事だと言えましょう。