2000年2月
【 2000年度予算法 】
2000年度予算法が発表されました。その主要点を以下にまとめてみます。
J 法人税の税率
K 企業に課される新たな社会負担税
L 親子会社間税制
M 定額法人税
N 乗用車税
O 付加価値税
P 登録税
Q 事業税
R 給与税
S 連帯税
XI 個人税制関連
J 法人税の税率
法人税(IS = Impôt sur les Sociétés)の基本税率は、1993年度以来33.33%と定めら
れています。
この税率は1995年度修正予算法により10%加算され、従って1995年1月1日以降終
了の事業年度から、実質的に、法人税率は36.66%に引上げられた結果となっています。
1997年11月10日発効の修正予算法により、1997年1月1日以降開始の事業年度に
対して、暫定的に新たな追加税の導入が決定されました。
この臨時追加税は次の様に適用されます:
同税の免除対象となるのは、資本の最低75%が個人によって保有されている法人税課
税対象企業で、当該事業年度の売上高が税抜きで五千万フラン以下の場合に限られます。
これ等の異なる措置を数字の上でまとめると以下の様になります:
1999年12月31日終了の事業年度の場合、 |
|
基本税率 |
33.33% |
10%追加税 |
3.33% |
10%追加税 | 3.33% |
――――― |
|
実質税率 40.00% |
|
2000年1月1日以降終了の事業年度の場合、 |
|
基本税率 | 33.33% |
10%追加税 |
3.33% |
――――― |
|
実質税率 36.66% |
K 企業に課される新たな社会負担税
この新措置は2000年度予算法の中に含まれているものではありませんが、2000年
1月1日以降に終了する事業年度の税額全体の算定に影響を及ぼす措置である為、ここ
で付け加えて解説を試みます。
売上高(税抜)が5千万フラン以上の企業が対象とされ、当該事業年度の法人税額が
5百万フランを越えた場合に、同負担金が課されます。
負担税の額は、基本税率(33.33%)の法人税額から一律5百万フランを控除した後の
額の3.30%に相当します。
[例] 1)
|
課税対象利益 : |
10 000 000F |
法人税 33.33% |
3 330 000 F |
|
一律控除 |
− 5 000 000 F |
|
―――――― |
||
社会負担税 |
0 F | |
2)
|
課税対象利益 :
|
15 000 000F |
法人税33.33% |
5 000 000 F |
|
一律控除 |
− 5 000 000F |
|
―――――― |
||
社会負担税 |
0 F |
|
3)
|
課税対象利益: |
20 000 000 F |
法人税33.33% |
6 660 000 F | |
一律控除 |
− 5 000 000 F |
|
―――――― | ||
差額 |
1 660 000 F |
|
社会負担税 |
||
1 660 000x3.30% = |
54 780 F |
L 親子会社間税制
同一企業グループ内の親会社・子会社間の配当に関する税制に於いて、1998年度まで
は、フランスの親会社は受取った配当の全額をその課税利益から控除する事が認められ
ていました。
1999年度予算法は、親会社が配当を受取った場合、タックス・クレジットを含む配当
金総額の2.50%を親会社の課税所得に加算する事を義務付けました(非課税所得に対応
する費用は損金不算入されるという考え方)。
2000年度予算法によって、1999年12月31日以降終了の事業年度を対象に、上記の
2.50%が5.00%に引上げられました。
以下に具体例を見てみましょう:
[例] |
12月31日終了事業年度 |
1997年度 |
1998年度 |
1999年度 |
受取配当金 |
1 000.00 |
1 000.00 | 1 000.00 |
|
控除額 | − 1 000.00 |
− 1 000.00 |
− 1 000.00 |
|
所得加算額2.5% x(1000+500) |
0 |
37.50 |
||
または5.0% x(1000+500) |
75.00 |
|||
1 000 = 配当純額 |
||||
500 = タックス・クレジット |
||||
課税所得 |
0 |
37.50 | 75.00 |
|
法人税33.33% |
− |
12.50 |
25.00 |
|
追加税10.00% |
− |
1.25 |
2.50 |
|
追加税15.00%(1998年度) |
− |
1.875 |
||
同 10.00% (1999年度) |
− |
2.50 |
||
税額 |
− |
15.625 | 30.00 |
M 定額法人税
定額法人税(IFA=Imposition Forfaitaire Annuelle)の税額は、企業の売上高(税込)
に従って八段階に分けられていますが、次に見る通り、2000年度予算法は、売上高が
5十万フラン以下の企業に対して、同税を免除しました:
売上高 |
税額 |
|||
500 000F 以下
|
0F
|
|||
500 001F 〜 1 000 000F
|
5 000F
|
|||
1 000 001F 〜 2 000 000F
|
7 500F
|
|||
2 000 001F 〜 5 000 000F
|
10 500F
|
|||
5 000 001F 〜 10 000 000F
|
14 500F
|
|||
10 000 001F 〜 50 000 000F
|
25 000F
|
|||
50 000 001F 〜 100 000 000F
|
100 000F
|
|||
100 000 001F 〜 500 000 000F
|
125 000F
|
|||
500 000 001F 以上
|
200 000F
|
この税金は納付期限が3月15日で、赤字企業にとっては費用となりますが、黒字企業
にとっては法人税の予定納税を構成し、支払うべき法人税からの控除が認められていま
す(納付の年および翌2年間内)。
N 乗用車税
1999年10月1日から2000年9月30日までの期間に、企業が所有またはリースしていた乗用車に課される乗用車税(Taxe sur les
Voitures des Société)の税額が、次の様に引上げられました:
登録馬力が8馬力以上の乗用車 |
‥‥‥ |
16 000F (これまでは14 800F) |
同 7馬力以下の乗用車 |
‥‥‥ |
7 400F ( 同 6 800F) |
企業が使用している乗用車の減価償却に関しては、登録上の走行開始日が1996年11
月1日以降の車に対する償却額の損金算入上限額は、12万フランと定められています。
O 付加価値税
今年度もTVAの税率には改正が見られず、従来通り以下の三つの率が存在する事にな
ります:
普通税率 |
‥‥‥‥‥ | 20.60% |
軽減税率 |
‥‥‥‥‥ |
5.50% |
超軽減税率 | ‥‥‥‥‥ |
2.10 |
しかしながら、1999年9月15日を以って、TVA税制に関する非常に重要な新措置が
導入されています。
即ち、居住用の場所(独立家屋・ビル・アパート)に工事が行なわれた場合、同日付以
降の工事費に対する税率が、これまでの20.60%から5.50%に引下げられました。これ
に対し、店舗の工事費に対する税率は、20.60%に据え置かれています。
P 登録税
1)事業用不動産の譲渡
1999年1月1日以降、事務所、店舗等、用途が事業用と定められている(建物内の一
定の)場所の譲渡に対して課される登録税の税率が、18.20%から4.80%(県税率3.60%
プラス市町村税率1.20%)に引下げられています。
2) 居住用不動産の譲渡
1999年9月15日以降、居住用の場所の譲渡に対して課される登録税の税率が、事業用
不動産と同率の4.80%に引下げられました。これまでの税率は、県によって5.40%また
は6.20%とされていました。
3) 営業権の譲渡
1999年9月15日以降に成立した営業権の譲渡に対して課される登録税の税率が、市場
価額15万フランを越える営業権を対象に、一律4.80%に引下げられました。従来の税
率との比較は以下の様になります:
旧税率 |
新税率 |
|
150 000F以下 |
0.00% |
0.00% |
150 001F 〜 700 000F |
7.00% |
4.80% |
700 001F以上 |
11.40% |
4.80% |
Q 事業税
1999年度予算法によって、事業税に関する改正が導入されました。その重要度から鑑
みて、ここでもう一度、概要を記してみたいと思います。
1)給与部分の課税ベースの段階的削除
事業税(Taxe Professionnelle)の課税ベースとしては、従来、次の二種の項目が存在
していました:
・企業が所有またはリースしている有形固定資産の賃貸価格
・支給した給与額の18%
2003年度の事業税より、給与に関する部分の課税ベースが完全に削除される事になり
ました。
それまでの移行期間に就いては、段階的に、課税対象給与額から下記の額を控除する事
が認められています:
(1999年度の事業税 | ・・・・・・・・・ |
100 000F) |
2000年度の事業税 | ・・・・・・・・・ |
300 000F |
2001年度の事業税 |
・・・・・・・・・ |
1 000 000F |
2002年度の事業税 |
・・・・・・・・・ | 6 000 000F |
同税は事業所単位で課税される為、企業が複数の事業所を所持している場合、上記の控
除措置も各市町村毎、各事業所毎に適用されます。
2) 税額の上限
同税の納付に当たり、税額に上限を設定する可能性が企業に対して認められています。
この上限額は、対象年度内に企業が生み出した付加価値に一定の率を掛けて算定されま
す。企業の売上高(税抜)に従って、以下の三つの掛率が存在します:
1999年度の事業税以降、当該付加価値税の算定に当たって従来控除の対象とされてい
る仕入外部費用の中から、動産・不動産の賃借費が除外されました。
3) 税額の下限
一方、課税対象年度の前年(歴年)の売上高(税抜)が5千万フラン以上の企業を対象
に、1996年度以降の事業税から、税額の下限が設定されました。
この下限額は、上述の付加価値の一律0.35%とされていましたが、1999年度予算法に
より、同率が、1999年度の事業税に関しては1.00%に、2000年度の事業税に関しては
1.20%に、2001年度の事業税に1.50%に引上げられています。
R 給与税
給与税(Taxe sur les Salaires)は、原則として、駐在員事務所や団体等、TVAの課税
対象となっていない企業がその従業員に支払った給与に対して課されます。
今年度もベースになる給与額が以下の様に引上げられました:
年次グロス給与額 |
税率 | |
41 780F以下 | ‥‥‥‥‥ |
4.25% |
41 781F 〜 83 480F |
‥‥‥‥‥ |
8.50% |
83 481F以上 |
‥‥‥‥‥ | 13.60% |
S 連帯税
連帯税(ORGANIC)の課税基準となるのは企業の税抜きの売上高で、具体的には、月
次のTVA申告書上に記入された数字の、歴年の合計額に相当します。
同税の税率には改正が無く、今年度も0.13%が適用されます。
当該売上高が5百万フラン未満の企業は、この税を免除されます。
XI 個人税制関連
1) 所得税
今年度も所得税に就いては、課税対象所得額の各区分の上限額が昨年度のインフレ率に
相当する0.50%引上げられただけで、税率自体は昨年度と同率が適用されます。
以下に、昨年度と今年度の税額算定表の比較を、家族係数1の場合を例に採って見てみ
ましょう:
1998年度所得税(1999年納付) |
1999年度所得税(2000年納付) |
||
課税対象所得額(F) |
税率(%) |
課税対象所得額(F) | 税率(%) |
26 100以下 |
0 |
26 230以下 |
0 |
26 101 〜 51 340 |
10.5 |
26 231 〜 51 600 |
10.5 |
51 341 〜 90 370 |
24.0 |
51 601 〜 90 820 | 24.0 |
90 371 〜 146 320 |
33.0 |
90 821 〜 147 050 |
33.0 |
146 321 〜 238 080 |
43.0 |
147 051 〜 239 270 |
43.0 |
238 081 〜 293 600 |
48.0 |
239 271 〜 295 070 |
48.0 |
293 601以上 |
54.0 |
295 071以上 |
54.0 |
一方、今年度の予算法は、企業の経営者または従業員が企業を去る(退職、解雇等)際
に支給を受ける手当の内、所得税免除の対象となる手当の種類および上限額を、新たに
規定しています。
2) 有価証券に関するキャピタル・ゲイン
2000年度以降の所得に関し、有価証券の譲渡額(複数の場合はその合計額)が5万フ
ランを超えない場合、譲渡により発生するキャピタル・ゲインに対しては、証券の種類
を問わず、所得税が免除されます。
3)所得税控除に関する各種措置
@ 常時居住用住宅維持修繕工事に伴う支出
常時居住用住宅の維持修繕工事の為に支払われた費用に対する税控除額が、1999年
9月15日以降の工事費を対象に、20.00%から5.00%に引下げられました。
この新措置は、同工事費に関するTVAの税率の引下げ(N-付加価値税の項参照)に伴うものです。
A 慈善団体等に対する寄付金
政党および慈善団体等に対して支払った寄付金に関し、税控除の対象となる上限額が、
当該寄付金額の一律6.00%と定められました。
2)富裕連帯税
富裕連帯税(ISF = Impôt de Solidarité sur la Fortune)の課税対象となる資産の最低
額470万フランも、また、累進課税対象額の各区分の上限額も、昨年度予算法と同様、
現行のままに据え置かれました。
以上が2000年度の新税制の概要ですが、最も重要な改正点は、営業権の譲渡および居住用
不動産の譲渡に対して課される登録税の税率の一律化と、居住用の場所の工事費に対する付加価値税の税率引下げの二点に見られると言えるでしょう。