2002年1月

【2002年度予算法】

2002年度予算法が発表されました。その主要点を以下にまとめてみます。
昨年度から変化のない項目についても、反復にはなりますが念のために記しました。

1. 法人税率
2. 親子会社間税制
3. 小規模企業税制
4. 定額法人税
5. 合併
6. 乗用車税
7. 付加価値税
8. 事業税
9. 給与税
10. 連帯税
11. その他
12. 個人税制



I.法人税の税率

法人税 (IS =Impôt sur les Sociétés) の基本税率は、1993年度以来33.33%と定められています。

この税率は1995年度修正予算法により10%加算され、従って1995年1月1日以降終了の事業年度から、実質的に、法人税率は36.66%に引上げられた結果となっています。

この加算された10%が引下げられました :
2001年に終了する事業年度 6%、つまり
33.33+ (6% x33.33)= 35.33

2002年に終了する事業年度 3%
33.33+ (3% x33.33) = 34.33

例えば、
2001年12月31日に終了する事業年度 − 35.33%の税率
2002年3月31日に終了する事業年度  − 34.33%の税率。

II.親子会社間税制

同一企業グループ内の親会社・子会社間の配当に関する税制に於いて、フランスの親会社はタックスクレジットを含む配当金の5%を課税所得に加算する事を条件に、受取った配当額を課税所得から控除(益金不算入)する事が認められています。

子会社の少なくとも5%の株式を所有している会社だけが、この制度の恩典を受けられます。このパーセンテージは昨年度と同様です。


III. 小規模企業税制

小規模企業の25万フランまでの利益に対して軽減税率の適用がなされます。

普通税率である33.33%の代わりに
2001年度開始年度については25%
2002年度開始年度については15%

しかしながら、この税率が適用されるには、企業は次の2つの条件を満たさなければなりません :
・ 売上高が5000万フラン未満である事、
・ 株式の75%が一人、又は複数の個人に属している事。

従って、外国企業のフランス法人については、実際にはこの適用は難しいといえるでしょう。


IV.定額法人税

定額法人税(IFA=Imposition Forfaitaire Annuelle)に於いては変更は見られません。

売上高
税額
76 000 €
以下

0 €
76 001 €

150 000 €
762,25 €
150 001 €

300 000 €
1 143,37 €
300 001 €

760 000 €
1 600,71 €
760 001 €

1 500 000 €
2 210,51 €
1 500 001 €
7 600 000 €
3 811,23 €
7 600 001 €

15 000 000 €
15 244,90 €
15 000 001 €

76 000 000 €
19 056,13 €
76 000 001 €
以上

30 489,80 €


この税金は納付期限が3月15日で、赤字企業にとっては費用となりますが、黒字企業にとっては法人税の予定納税を構成し、支払うべき法人税からの控除が認められています(納付の年および翌2年間内)。


V.合併の際の税制 − 企業再編成の時の全体調整

この項目は2002年度予算法の改革の主たるものです。2002年1月1日から適用となったこの点につき、概略を説明いたします。

  1. 一般税法に、直接税、すなわちキャピタルゲインにかかる有利な税制を適用される、企業の合併・分割・特定現物出資の定義が明記されました。
  2. この有利な税制を適用される企業は、フランス企業・EU域の企業そしてタックス ヘイブンを除く、フランスが租税条約を締結している国(アメリカ・日本等)の企業に限られます。
  3. この合併時の優遇制度を享受するには、外国法人に対する出資の事前の許可が必要です。この許可は、フランス企業間のオペレーションと同様に次の2点をカバーする場合におります。つまり、これらのオペレーションが、課税対策ではなく企業再編成の目的によって行われ、猶予されるキャピタルゲイン税が将来はそれ以上に課税することが可能だという点です。
  4. 特定現物出資について、出資をする会社がその資本金の50%以上を持ち寄る場合は、その企業活動全体を現物出資するとみなされます。
  5. 欠損金の移転
合併等の場合、どういう場合に欠損金移転の許可を授与されるのか、又移転されるであろう金額についても、法で規定されています。

この許可がおりるのは、合併等のオペレーションが経済的視点で正当と認められ、又、移転を望む欠損を出した企業活動が最小限3年間続けられることを条件にします。

次の2つの金額のいずれか大きい方を限度に欠損金は移転されます。
経営の為の不動産資産要素の粗価、
同要素の出資価値。

6. キャリーバックの移転
今後はキャリーバックも、その額面すべて、移転されることになりました。

7. その他
他にも多数の措置が定められましたが、ここでは詳細には入りません。
企業再編成をなさる前には、ぜひ、専門家にご相談ください。


VI.乗用車税

2001年10月1日から2002年9月30日までの期間に、企業が所有またはリースしていた乗用車に課される乗用車税(Taxe sur les Voitures de Société)の税額は前年度と同様です :
・ 登録馬力が8馬力以上の乗用車 ・・・・・・ 2 440 €
・ 登録馬力が7馬力以下の乗用車 ・・・・・・ 1 130 €


VII.付加価値税
普通税率
19.60%
軽減税率
5.50%
超軽減税率
2.10%

従来どおり3つの税率が存在し、その税率は上記のとおりです。

付加価値税についての新しい措置は、次の3項目です。
1. 控除不可能とされた会社のディーゼル車の軽油にかかる付加価値税は、再び2001年6月1日から80%の控除を認められるようになりました。
それ以前のこの経費については、調整がなされます。

2.フランスにおいて課税される事業をしているEU域の課税対象者は、税務代理人を立てずに、直接税務署に税の支払をすることができるようになりました。

3.不当なVATの払い戻しは、それが故意になされたとみなされた場合、返還とともに、その40%の罰金が科されます。


VIII.事業税

1999年度予算法によって、事業税に関する重要な改正が導入され、今年も引続き軽減措置がとられます。ここに再び概要を記す事にいたします。

1.給与部分の課税ベースの段階的削除

事業税(Taxe Professionnelle)の課税ベースとしては、従来、次の2種の項目が存在していました :

・ 企業が所有またはリースしている有形固定資産の賃貸価格
・ 支給した給与額の18%

2003年度の事業税より、給与に関する部分の課税ベースが完全に削除される事になりました。

それまでの移行期間については、段階的に、課税対象給与額から下記の額を控除する事が認められています :


1999年度の事業税 ……
100 000F


2000年度の事業税 ……
300 000F


2001年度の事業税 ……
1 000 000F


2002年度の事業税 ……
6 000 000F


同税は事業所単位で課税される為、企業が複数の事業所を所有している場合、上記の控除措置も各市町村毎、各事業所毎に適用されます。

2.税額の上限


同税の納付に当たり、税額に上限を設定する可能性が企業に対して認められています。この上限額は、対象年度内に企業が生み出した付加価値に一定の率を掛けて算定されます。企業の売上高(税抜)に従って、以下の3つの掛率が存在します :

・ 課税対象年度の売上高が1億4千万フラン以下の企業は3.50%
・ 同売上高が1億4千万から5億フランの企業は3.80%
・ 同売上高が5億フラン以上の企業は4.00%

1999年度の事業税以降、当該付加価値税の算定に当たって従来控除の対象とされている仕入外部費用の中から、動産・不動産の賃借料が除外されました。

3.税額の下限

一方、課税対象年度の前年(歴年)の売上高(税抜)が5千万フラン以上の企業を対象に、1996年度以降の事業税から、税額の下限が設定されました。

この下限額は、上述の付加価値の一律0.35%とされていましたが、1999年度予算法により、同率が、1999年度の事業税に関しては1.00%に、2000年度の事業税に関しては1.20%に、2001年度以降の事業税に関しては1.50%に引上げられています。


IX.給与税

給与税(Taxe sur les Salaires)は、原則として、駐在員事務所や団体等、TVAの課税対象となっていない企業がその従業員に支払った給与に対して課されます。

今年度もベースになる給与額が以下のように引上げられました :

年次グロス給与額
税率
6 563 € 以下
4.25%
6 564 € − 13 114 €
8.50%
13 115 € 以上
13.60%


X. 連帯税

連帯税(ORGANIC)の課税基準となるのは企業の税抜きの売上高で、具体的には、月次のTVA申告書上に記入された数字の、歴年の合計額に相当します。

同税の税率には改正がなく、今年度も0.13%が適用されます。

当該売上高が760 OOO € 未満の企業は、この税を免除されます。


XI.他の新制度

1. 減価償却定率法

フランスの定率法の償却率は、定額法の償却率に、耐用年数によって規定されている係数を乗じて求めます。
2001年1月1日以降に取得したものについての係数は下記のとおりです。
耐用年数
係数
3 − 4年
1.25
5 − 6年
1.75
7年以上
2.25

フランスにおいて、定率法は倉庫保管業、あるいは産業活動(機械)についてのみ適用することができ、一般には使われません。

2002年3月31日以前に注文、製造されて取得した資産について、次の新しい点があります。

− 定率法が適用できる資産を製造、取得した場合、初めの12ヶ月分は、その30%増で減価償却をすることができます。
− 2002年3月31日までに安全装置を設置、或いは注文した中小企業は、その使用開始日から12ヶ月で減価償却をできるという特別措置を享受できます。
  ここで言う中小企業とは、年間売上高が7 630 000ユーロ未満の企業を指します。


2. 銀行送金による納付

2002年1月1日から、銀行送金か自動引き落としでの税金納入義務の下限が50万フランから5万ユーロ(327 979F)に変わりました。

法人税・給与税・所得税・事業税・固定資産税等に適用されます。

これらの義務が遂行なされなかった場合、他の方法で納付された額の0.2%が加算されます。


XII.個人税制関連

1.所得税

2002年度納付の2001年度所得税の税率は昨年度より引下げられ、又課税所得の各区分の上限額はインフレ率に相当する1.6%引上げられます。

以下に2年間の税額算定表の比較を、家族係数1の場合を例にとってみましょう :


2000年度所得税(2001年度納付)
2001年度所得税 (2002年納付)
課税所得(€)
税率(%)
課税所得(€)
税率(%)
26 600以下
0
4 121(27 032F)以下
0
26 601− 52 320
8.25
4 122− 8 104(53 159F)
7.5
52 321− 92 090
21.75
8 105− 14 264(93 566F)
21
92 091−149 110
31.75
14 265−23 096(151 500F)
31
149 111−242 620
41.75
23 097−37 579(246 502F)
41
242 621−299 200
47.25 37 580−46 343(303 990F)
46.75
299 201 以上
53.25
46 344
52.75



2.富裕連帯税

富裕連帯税(ISF= Impôt de Solidalité sur la Fortune)の課税対象となる資産の最低額は720 000 € に、課税対象額の各区分の上限額は、昨年予算法と同様、現行のままに据え置かれました。

3.ヴィネット (Vignette)

昨年12月1日より、個人について個人使用の乗用車にかぎりヴィネットは免除されました。ただし、乗用車をリース、所有している企業は、3台目までは免除、それ以上については免除の対象とはなりません。





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これまで見て参りましたように、企業再編成に関しての措置を除き、2002年予算法には目立って大きなフランス税法上の変化はないと言えるでしょう。