2003年10月

【2004年度予算法案

2004年度予算法が発表されました。その主要点を以下にまとめてみます。

I.法人税の税率
II.欠損金無期限繰越の権利
III.研究に関するタックスクレジット
W.定額法人税
X.付加価値税
Y.給与税
Z.個人税制関連



I.法人税の税率

法人税 (IS =Impôt sur les Sociétés) の基本税率は、1993年度以来33.33%と定められています。

この税率は1995年度修正予算法により10%加算され、従って1995年1月1日以降終了の事業年度から、実質的に、法人税率は36.66%に引上げられた結果となっています。

この加算された10%が引下げられました :


2002年2003年に終了する事業年度 3%

    33.33+ (3% x 33.33) = 34.33

例えば、




2002年12月31日に終了する事業年度

34.33%の税率。
同じく




2003年3月31日に終了する事業年度
34.33%の税率。

2004年度に終了する事業年度には、33.33%に戻されるはずですが、これについてはまだ明白に言及されていません。


II.欠損金無期限繰越の権利

2004年1月1日以後開始事業年度に欠損が生じた会社は、その欠損金を無期限に繰越をすることができます。

又、2004年1月1日以後開始事業年度の前年度末の繰越欠損金残高に対しても同様の措置がとられます。

以前は、通常の欠損金は5年間しか繰越をすることができませんでした。ただ減価償却による欠損金だけが無期限に繰越し可能でした。


III.研究に関するタックスクレジット

研究費に関するタックスクレジットは継続されます。(以前は4年毎でしたが、これからは毎年選択することもできます。)

2004年1月1日から費やされた研究に関する経費に対し、次の2つの額の合計がクレジットとなります。

− その年に費やした研究費の5% 「研究費に対する5%」
  (公的研究機関に依頼した研究経費については、その実際の金額の2倍に計算されます。)

− 前2年間の研究費平均とその年の研究費との差額の45% 「増加分に対する%」

タックスクレジットの年間最高額は6,100,000ユーロから8,000,000ユーロに上がりました。

例. ある会社が2004年から2007年にかけ、毎年1,800,000ユーロの研究費用を計上しました。その会社が受けるタックスクレジットは次のとおりです。

2004年度について
900,000ユーロ
2005年度について
495,000ユーロ
2006年度について
90,000ユーロ
2007年度について
90,000ユーロ


IV.定額法人税

定額法人税(IFA=Imposition Forfaitaire Annuelle)に於いては変更は見られません。


売上高

税額
76 000 €
以下

0 €
76 000 €

149 999 €
750 €
150 000 €

299 999 €
1 125 €
300 000 €

749 999 €
1 575 €
750 000 €

1 499 999 €
2 175 €
1 500 000 €

7 499 999 €
3 750 €
7 500 000 €

14 999 999 €
15 000 €
15 000 000 €

74 999 999 €
18 750 €
75 000 000 €
以上

30 000 €

この税金は納付期限が3月15日で、赤字企業にとっては費用となりますが、黒字企業にとっては法人税の予定納税を構成し、支払うべき法人税からの控除が認められています(納付の年および翌2年間内)。


X.
付加価値税

普通税率
19.60%
軽減税率
5.50%
超軽減税率
2.10%

従来どおり3つの税率が存在し、その税率は上記のとおりです。

EUの同意を得れば、レストランも普通税率の19.60%から5.50%の軽減税率に下がる見込みです。

又、家屋の工事についての軽減税適用は今後も継続される予定です。


Y
給与税

給与税(Taxe sur les Salaires)は、原則として、駐在員事務所や団体等、TVAの課税対象となっていない企業がその従業員に支払った給与に対して課されます。

2004年度もベースになる給与額が以下のように引上げられます :

年次グロス給与額
税率
6 789 € 以下
4.25%
6 790 € − 13 564 €
8.50%
13 565 € 以上
13.60%


Z
個人税制関連

1.所得税

2004年度納付の2003年度所得税の税率は昨年度より3%引下げられ、又課税所得の各区分の上限額はインフレ率に相当する1.7%引上げられます。
以下に2年間の税額算定表の比較を、家族係数1の場合を例にとってみましょう :

2002年度所得税(2003年度納付)

2003年度所得税 (2004年納付)

課税所得(€)
税率(%)
課税所得(€)
税率(%)
4 190 以下
0
4 261 以下
0
4 191 – 8 241
7.05
4 262 - 8 381
6.83
8 242 – 14 505
19.74
8 382 – 14 752
19.14
14 506 – 23 488
29.14
14 753 - 23 887
28.26
23 489 – 38 217
38.54 23 888 – 38 867
37.38
38 218 – 47 131 43.94
38 868 – 47 931
42.62
47 131以上
49.58
47 932 以上
48.09

2.個人の不動産キャピタルゲイン

個人の不動産キャピタルゲインに対する課税について、2004年予算法は大きな改革を見込んでいます。不動産売却時にキャピタルゲインは、動産資産のキャピタルゲインと同様に26%の税率で課税される見込です。
ただし、15年以上所有していた不動産は、除外されます。

この制度はEU国の居住者にも適用されます。

3.家庭に於ける雇用経費の上限

家庭で雇用する経費(ベビーシッター・家事手伝いなど)の50%が控除の対象となります。 この経費の上限額は2003年1月1日から10 000€とされています。

4.富裕連帯税

富裕連帯税(ISF= Impôt de Solidalité sur la Fortune)の課税対象となる資産の最低額は720 000 € に、課税対象額の各区分の上限額は、インフレ率に準じて見直される見込みです。












2004年度の予算法案に於いて目立つ変化は、次の点でしょう。

− 企業にとっては、欠損金の無期限繰越と研究費タックスクレジット、
− 個人にとっては、所得税率の軽減と不動産キャピタルゲインの課税制度。